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東京オフィスリニューアルの舞台裏!全社を巻き込むプロジェクトのキーは「共感を得る」こと!

先月公開した記事「ハイブリッドワークに対応!サイボウズ東京オフィスをリニューアルしました!」にはたくさんの反響をいただき、ありがとうございました!

今回の記事では、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)流行以降のワークプレイスチームの動きから、2022年8月のオフィス完成までの取り組みを時系列に沿ってご紹介します。社内の共感を得る上で注力・工夫したことについても詳しく書いていますので、オフィスの今後の在り方についてお悩みの人事、担当部署の皆様だけでなく、社内を巻き込みながら進めたいあらゆるプロジェクトの担当チームの皆様にとって参考になれば嬉しいです。

リニューアルプロジェクトの中心的存在「ワークプレイスチーム」とは

サイボウズの人事本部には、チームワークよく働く「場所」づくりをミッションにしている「ワークプレイスチーム」があります。
6名がプロジェクトの中心的存在として、社内を巻き込みながら「東京オフィス再構築プロジェクト」(以下、東京再構築PJT)を主導していきました。

プロジェクト全体の概要

前回の記事でご紹介した9ヶ月ほどかけてエリアの設計〜施工は、実はその前からアフターコロナのオフィスの在り方について情報収集を始めていました。情報収集を開始したタイミングまで遡ると、2年3ヶ月以上前の2020年5月にまで遡ります。

オンライン会議急増!会議室不足に至急対応せよ

2020年5月には国内で働く全ての従業員を対象としたアンケート「働き方NEXTを考えるアンケート」、6〜7月には東京オフィス所属メンバーに参加を呼びかけた「ワークプレイスNEXTを考える仕事BAR」というイベントを実施しました。
アンケートではコロナ後の働き方や現状のオフィスに対する考えなどの設問に、総勢456名に回答してもらいました。仕事BAR*では、身体的距離を保つことを目的として、定員の半数以下の人数での利用や、同じ会議に別の部屋から分かれて接続することが増えたことから高まった会議室ニーズにより発生した「会議室数不足」に対する声や、「web会議の音漏れ」に関する生の声が集まりました。

┃*仕事BAR 《(しごとばー) 業務時間内に業務として参加することのできる勉強会・意見交換会の社内制度のこと。》

「働き方NEXTを考えるアンケート」の一部
社内kintoneに書き込んだ「仕事BAR」の告知文

当時は2019年5月に執務エリアを増床したばかりであったことや、 COVID-19が全世界でここまで長期化することを想定できていなかったため、工事などで大きくレイアウト変更をする考えはありませんでした。
急増するニーズに至急対応するため、短納期・低コストで実施できる対応を検討し、10月には一人用の完全個室ブース・半個室ブースの家具を新しく設置しました。

置き型家具の完全個室ブースを新規設置し、半個室ブースを増設した

一向に収まらないコロナ。オフィスの存在価値を改めて徹底議論!

個室・半個室ブースの増設でオフィス利用者のニーズに即時対応したものの、なかなか終息の兆しの見えないCOVID-19。 世間的にはCOVID-19の長期化を見据えて、本社機能を地方に移転する企業やオフィスを解約する企業が出てきて、人の少ないオフィスをこのまま維持すべきなのだろうか?と社内でも関心が高まってきた頃でした。

サイボウズはどの拠点も自社ビルではなく、テナントとしてオフィスビルに入居しています。COVID-19下でリモートワークが主体となる中で、オフィスに従業員が集まらなくても事業を継続できることがわかり、決して少なくはない賃料をこのまま支払い続けるべきか、オフィスの価値を根本から問われる初めての状況でした。
そのため、今後のオフィスのあり方についてはワークプレイスチームだけで判断するのではなく、社内の意見を取り入れながら判断することにしました。

具体的な施策としては、先述したアンケートに加え、直接意見を聞く場として各本部の代表者を集めたワーキンググループを結成しました。
特定の属性の人間だけが会社の重要な方向性を決めてしまうと、重要な視点を見逃してしまう可能性もあり、非常に危険なことです。元々サイボウズでは「自立と議論」の風土もあることから、社内のメンバーは意見収集において基本的に協力的に取り組んでくれる傾向はあります。
更に、これを”業務”として行っていただくことで、参加者個人の好みに合わせた意見ではなく、組織として動く上での意見を集めることができたと考えています。

オフィスの今後の在り方について各本部からの意見を収集し議論を重ねた結果、ワークスタイルにより適したオフィスにするため、機能をアップデートしていく必要があること、リアルオフィスとしての特報をさらに活かし、自宅(カフェ)・コワーキングスペースでは行えない機能を盛り込んでいくことが必要、という結論が出されました。
そして、ワーキンググループで出された結論・そのほかの社内の意見・アンケート結果・社外の不動産業の情報・今後の従業員増やニーズの変化などのデータを元に、ワークプレイスチームでは東京オフィスの面積は維持し、時代のニーズに合わせてアップデートしていくという方向性を起案、社内で承認されました。

当時の起案内容

再構築プロジェクト始動!全3フェーズの全容が決定

2021年4月、社内での承認を受け、よりハイブリッドな働き方の拡大に対応できるよう、「東京再構築PJT」を全3フェーズの大規模プロジェクトとして行う計画を立てました。コロナ禍で変化してゆくニーズにより素早く・臨機応変に対応できるよう、小さなところ(什器入替や軽微なレイアウト変更など)から段階的に進めていく内容です。

2021年4月当時の計画

PHASE1では「多様性理解・促進」「音のゾーニング」に取り組み、来客エリアにダイバーシティに対応した会議室「DIVER」を2021年9月にオープンしました。また、静かに働きたい場面・わいわい働きたい場面を同じフロア内で実現できるように一部の家具のレイアウトを変え、音のゾーニングを実施しました。

左:会議室「DIVER」は子連れ出社、搾乳、瞑想、お祈りなど多目的に対応。車椅子や視覚障害のあるひとも使いやすい設計を意識した。
右:音のレベル分けに合わせて家具を一部入れ替えた。

「見通しが立たない」コロナ禍、方針に共感が得られず苦戦

PHASE1を終え、PHASE2〜3のプランを提案したのは2021年9月。
2021年4月当初の計画ではPHASE2では個室ブースの家具などを増やし、PHASE3で大規模な工事を実施するような内容でしたが、設計会社との打ち合わせを踏まえ、PHASE2とPHASE3を同時にリニューアルし、1年後の2022年9月に27F・28F両フロアの再構築が完成した状況を目指す内容に修正しました。

コロナ以降、働き方の多様化・柔軟化が進み、おかげでサイボウズのメンバーの増加ペースが著しく増えました。
当初から座席が足りなくなることは想定済みでしたが、より早いペースで人数が増えたため、仮に出社率が40%だったとしても席が足りなくなることがわかっていました。(コロナ前の出社率は70%)。
工事をする場合、計画から完成まで約1年かかるのでCOVID-19が終息してから取り組むのでは遅過ぎます。現状のオフィスに人が戻ってきて、困りごとが出はじめてから計画を立てると、1年近くの間、使いづらいオフィス環境を使うことを強いることになってしまいます。
出社人数が少なく、困るメンバーが少ないうちに2フロアを一気に改装してしまった方が、アフターコロナの働き方・人数に対応でき、オフィスを快適に使うことができると考えました。

2021年9月当時の計画

ほかにも、長引くCOVID-19により、計画当初に想定していなかったような影響も出始めており、世界中で資材の価格が高騰し、2019年の増床時を参考に確保していた予算に収まらないこともわかりました。工事を分けて実施するよりもまとめて実施した方がコストパフォーマンスが高いことも聞き、計画をまとめることを起案しました。

このような考えからPHASE2とPHASE3の同時実施を経営会議で提案したものの、社内からの助言(意見)にて、先行きがわからない中で全面リニューアルすることへの不安の声や、費用の不明瞭さなどについての意見が寄せられました。

サイボウズでは誰でも経営方針に関わることができます。(1)経営会議アプリに提案を登録(議題は誰でも閲覧できる) (2)kintoneアプリから誰でも助言(意見)を登録することができる (3)助言(意見)を踏まえて本部長が決裁する…という流れで承認プロセスが設けられており、従業員の助言(意見)は承認有無への影響力があります。

オフィスを全面リニューアルする必要性に対する声は、働き方の変化が影響していました。既にコロナ禍に入って1年以上経ち、在宅勤務に多くのメンバーが慣れていたことから、多くのメンバーはオフィスがなくても働けることを実体験していました。
工事する必要性があるの?このままコロナが終息しても、引き続き在宅勤務をし続けるだろうからオフィスはこのままでよいのではないか。自分は困っていないので大丈夫。というコメントが寄せられました。

費用面については、工事内容や仕様、間仕切りの位置が詳細に決まってからでなければ見積もりが出ないことからワークプレイスチームでは総費用を提示できていなかったため、具体的な費用が提示されていないと判断ができない、という意見がありました。

「共感されない計画」をどのように軌道修正し、共感を得ていったのか

反対を受け、ワークプレイスチームでは計画を再考することにしました。

全面リニューアルについてはコストパフォーマンスがより高いということ以外の強い理由はなかったため、まとめて実施するのではなく、共感を得ながら実施できる範囲として27Fの執務エリアのみを対象とすることにしました。

一方、改装の必要性については議論の余地がありました。WGで事前に話し合った内容に加え、コロナ禍で入社したメンバーからはリモート中心の働き方における不安・不満の声が上がっていたのです。
これらの根拠をもとに、工事実施の必要性を理解してもらうためには社内メンバーに問題の自分ごと化してもらい、プロジェクトに関心をもってもらう必要があると考え、社内広報活動に取り組みました。

このほかにもさまざまなアンケートにて、リアルオフィスでの交流を求める声があがっていた

「仕事BAR」「CMタイム*」などの社内の意見交換会・説明会制度を利用してワークプレイスチームの考えを共有しつつ、2つの新たな取り組みもしました。

┃*CMタイム《集まった社員に施策担当者が自分の言葉で施策の紹介をする、業務時間中に行われる月に一度のイベント。》

一つは、動画の作成です。
「オフィスに人が戻り始めたあとの世界が想像しにくい状況」があげられると考え、イメージを共有しやすいように映像の形式で届けることにしました。日々オフィスに向き合っていて情報収集をしている「ワークプレイスチームの目線」と、「その他のメンバーの目線」が揃ったことで「このままのオフィスではCOVID-19が収まった時、さまざまな問題が起こりそうだ」と実感してもらえました。

様々な部署から名物社員に出演協力いただくことでどの部署のメンバーでも「自分ごと化」しやすく工夫した

関心をもってもらうため、ニュースレターの投稿も行いました。
プロジェクトの途中からkintone上で「週刊Cy/Cle」という記事を定期的に投稿していました。プロジェクトの進行が気になった方が参照できるように、プロジェクトの1週間の動きをまとめたものです。このニュースレターを継続して投稿しつづけることで、社内メンバーの目に自然と入るようになり、説明責任を果たす意識をしました。

週刊Cy/Cle(サイクル)の投稿例

このような工夫をし、2021年10月には、PHASE2とPHASE3を分けて実施すること、PHASE2では27Fの執務エリア(執務室全体の1/3)を対象にリニューアルし、PHASE3では状況やニーズを見ながら28Fの執務エリアに取り組む方針に軌道修正しました。

2021年10月当時の計画

オフィスのオープン!その後も”耕し続け”ます…!

こうしてPHASE2では社内を巻き込みながら段階的に進めていき、2022年7月末に工事を終え、8月8日より27F 執務エリアでの営業を開始しました。
オープンして2ヶ月が経とうとしていますが、ここで「完成」とは思っていません。

ワークプレイスチームではオフィスを「常に手を入れて、天気や土壌の状態に合わせて耕してゆくことで美味しい野菜や果物が実る”畑”のようなもの」と畑に例えて表現しています。
社内メンバーが使っていくなかでの要望や気づいたことがあれば気軽に登録できる「フィードバック箱アプリ」を作成し、ワークプレイスチームが日々改良・改善に取り組んでいます。
さらに、オフィスの運用ルールを各本部の代表者と共に考えていく「東京オフィス運用ポリシー検討PJT」も新たに発足。利用ルールやオフィスの運用について話し合う定期的な会議を今後も実施していく予定です。

「フィードバック箱アプリ」にすぐ登録できるようQRコードを社内のいたるところに設置しました

おわりに

影響範囲が広いプロジェクトであるほど、社内の共感を得ることは容易くありません。社内の取り組みに対して誰でも意見を表明でき、活発に議論されるサイボウズだからこそ感じる難しさもありました。ですが、周囲から応援されるプロジェクトにするために気をつけなければならないことは意外とシンプルかもしれません。
私もこのプロジェクトでの経験を踏まえ、情報を惜しみなく提供すること、共感を得ること、協力者を増やすことの大切さは身をもって実感しました。
皆様の会社でも取り入れられそうなことや記事の感想があれば、ぜひTwitterにコメントいただけると励みになります!→@cybozubackstage
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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