2023年の集合研修はハイブリッド型で開催!「サイボウズ流」を学ぶ4週間を徹底紹介!
2023年4月、2023年新卒社員を対象に1ヶ月間の集合研修を実施しました。
今年の集合研修はコロナ禍の知見を踏まえてオフライン+オンラインの「ハイブリッド型」という新しい研修のスタイルで開催しました。
ハイブリッド型研修をすることになった経緯や具体的なコンテンツ、やってみての振り返りなどをご紹介します。
前回記事:
研修コンテンツの目的は様々。「ハイブリッド型」ならどれもカバーできる!
サイボウズでは新型コロナウイルスの影響を受け2020年から3年間、オンラインで新人研修を行いました。そこでオンライン研修は講義形式のものと相性が良い反面、コミュニケーションをとりながら行う研修や関係性構築には不向きなことが徐々にわかってきました。
感染が徐々に落ち着きを見せるようになった2022年10月、試しに新人研修のディスカッション系の講義をオフィス内で顔を合わせながら行いました。そこで新人同士・人事メンバーにとってコミュニケーションをとるワークや社員同士の関係性づくりにはオフラインの研修が有効だと実感しました。
そうして今年はオンラインとオフラインの良さを活かした研修の構成を企画し、ハイブリッド型の集合研修を開催することになりました。
対面で伝えるべき・対面で参加してもらいたい内容をオフィス内で実施し、そうでないものは自宅かオフィスからWeb会議を通して参加することを選択できるようにしました。
ハイブリッド型研修の4週間の構成
研修期間は例年と同じ4週間で行いました。
・第1週(4/ 3〜4/7)@オフィス
・第2週(4/10〜4/14)@自宅orオフィス
・第3週(4/17〜4/21)@自宅orオフィス
・第4週(4/24〜4/28)@オフィス
集合研修のコンセプトは「新入社員のメンバーに、チームサイボウズのメンバーとして、わくわくしながら働いていくための準備ができた!と言ってほしい」です。サイボウズで大切にしている価値観から「個人の自立」と「チームワーク」を2本の軸としてさまざまなコンテンツを用意しました。
最初の3週間は「個人の自立」をテーマにした基礎/応用研修・部門交流会(各本部の活動内容の説明や先輩社員との交流会)を行いました。最後の4週目は実践研修と題し、顧客への提案を想定した課題にグループで取り組んでもらい、チームワークよく働く上での大切な要素を体感できる研修を行いました。
「個人の自立」をテーマにした研修の構成
サイボウズ1年目の最初の1ヶ月に特に学んでもらいたいカテゴリーは「信頼」「やるべき×できる」「わくわく」です。この3つからなる座学・ワークをメインとして研修を構成し、サイボウズで社会人として働く上での考え方や知識を得てもらいました。それぞれのカテゴリーは、以下のように定義しています。
「信頼」カテゴリーの例
「信頼」のカテゴリーでは、働くことに伴う責任感の醸成を目的として「セキュリティ教育」「インサイダー研修」等を実施しました。また、サイボウズ社内で信頼を得るための行動規範「Action5+1」やサイボウズのチームワークメソッドを体感する「もやもや共有ワーク」の時間もとりました。
他にも、サイボウズ社員としての考え方を交えた「お金/機器の考え方」では、サイボウズの人的資本投資の考え方の中の一例として、個人の要望に合わせてデバイスを支給している制度についての話をしました。
サイボウズでは業務をする上で必要なPCをはじめ、キーボードやマウスなどの周辺機器を希望通りに用意しています。
これは業務に集中しやすい環境を整備することで業務に集中し質の高いアウトプットを出してもらうことが制度の目的です。しかし、この制度を「高額でも、好みのものを会社が買ってくれるから買ってもらおう」と受け止められてしまうと、意味合いが変わってきてしまいます。
「なぜサイボウズではそのような制度があるのだろう?」「そのお金はどこから出ていて、何故そこに投資してくれているのだろう?」というところを新卒の皆さんに考えてもらい、制度の意図を理解していただきたい。そして、その意図に沿っているかを自分で考え判断して必要なら申請してもらいたいという趣旨があり、研修に取り入れました。
「やるべき×できる」カテゴリーの例
サイボウズでは「モチベーション3点セット」という考えがあります。「やるべきこと・できること・やりたいこと」この3点が揃った時にモチベーション高く仕事に取り組めるという考えです。
サイボウズは社外から見ると、「やりたいことができる」というイメージがあるかもしれません。しかし「やるべきこと」の中から「できること」を増やしていかないと、周囲から仕事を任せてもらえず「やりたいこと」までできるチャンスが回ってきません。「やるべきこと」の中から「できること」が増やせるように入社後の半年を過ごしていきましょう、という意図でこのカテゴリーの研修を厚めにしています。
「やるべき×できる」の一例として、2週目の1日目には「選択(トレードオフ)の考え方」という講義を実施しました。昨年まで配属発表の時に話していた内容ですが、配属先を考える上でも参考にしてもらうため、「選択肢が存在することと、選択できることは違う」ことを研修期間の前半に話しました。サイボウズには「100人100通り」という言葉がありますが、100人100通りのマッチングは選択の連続であり、自由に選べるということではないこと、そして選択をする上で覚悟や責任が伴うことを伝えしました。
「わくわく」カテゴリーの例
「オフィスを持っている理由」という講義ではリモートワークが進むサイボウズでのオフィスの役割を話しました。
今年の新卒メンバーは学生時代からWeb講義が主流なリモートネイティブ世代です。そんな皆さんは主要製品がクラウド製品のサイボウズでリアルオフィスがあることを疑問に思うのではと考え、初めて研修に取り入れました。
この講義でこだわったポイントは、敢えて研修の後半に開催日を設定したことです。1週目・2週目でオフライン研修とオンライン研修をどちらも経験してもらい、「自宅でも仕事ができるのに、なぜオフィスに投資しているのか」という疑問が湧いてくるタイミングに実施しました。
働く場所の選択肢の中でのリアルオフィスの位置付けやリアルオフィスのコンセプトを知ることで「どんな時にオフィスで働くことを選択するか」「どんな時に在宅勤務を選択するか」を新人が自分自身で判断できるようになってもらいたいという考えお話ししました。
その他のプログラムは新卒オンボーディングチームが利用していた資料の一部キャプチャにてご覧ください。
ハイブリッド型研修にあたり変えたこと・変えなかったこと
変えたこと:「自習時間」で自分が学ぶ内容を選択
今年は例年より多くの自習時間を用意し、学ぶ内容も自分で選択できるようにしました。時間は2週目以降、平均して1日あたり1〜2時間ほどをプログラムに入れ、学ぶ内容は従来のkintone認定資格アソシエイト試験以外にも、動画学習サービスなども選択肢に入れました。
1週目の終わりに「自習時間の使い方」という講義を開き、自習時間は自由時間ではなく自分で「今」必要なものを学ぶ時間として使ってほしい、研修中は「やるべきこと」に対して「できること」を増やすために自習時間を使っていきましょうと説明しました。自習した内容は日報で共有するルールも添えたので、日報を研修担当者や先輩社員が読むことで、新入社員はどんなことに興味があるのか、どのようなフォローが必要なのか考える材料にもなりました。
自習時間を増やし、選択肢を多く設けた意図としては、「参加者の多様性」「健康への配慮」の2つが挙げられます。
サイボウズの集合研修では、技術職採用・ビジネス職採用すべてのメンバーが合同で研修を受けます。そのため、参加者のバックグラウンドやスキルが多様です。多様なメンバーが集まっていれば、自分に足りない・もっと理解を深めたいと感じるポイントも様々になります。
技術の勉強をしたい人、ビジネスマナーを身につけたい人、他には頭の整理の仕方等の仕事術を身につけたい人、配属先部署の希望を考えたい人など、どんなインプットを求めているかは個人によります。本部への配属後も空き時間があればその時間の使い道を自分で考え、自立して選択する必要があるので、その練習にもなると思い、各自が考えて使う時間にしました。
健康への配慮という視点では、自身でコンディションを整える時間として使ってほしいという意図もありました。オンライン研修では会議室間の移動時間が無いので、予定をびっしり詰め込むことも可能です。しかし、2023年度の新入社員の皆さんは学生時代からオンライン授業が多く、比較的慣れてはいる方も多いとはいえ、一日中パソコンの前で集中して講義を聞くのは精神的にも体力的にも疲労が溜まります。1時間の自習時間の中で自分のペースで休憩を挟みつつ学習してもらうことで、健康管理ができるように配慮しました。
変えなかったこと:「テキストコミュニケーション講座」を継続
今年も変えなかったことの一つ目は、オンライン研修を始めた頃から実施している「テキストコミュニケーション講座」です。
対面コミュニケーションでは伝えるための情報が視覚・聴覚・言語情報と揃っていますが、テキストコミュニケーションでは補足情報が少ない分、誤解やすれ違いが生じやすいことを考慮する必要があります。既に関係性のある人同士でもテキストでは苦労することもあるため、関係性が無い中でテキストコミュニケーションをしなければならない新入社員にとっては必要な研修と考え、今年も継続を決めました。
状況が伝わりづらい環境だからこそ、受け取り側は相手の状況を想像すること、送り手側は相手への配慮が必要ということを伝えました。
変えなかったこと:すべての講義を社員が実施
サイボウズでは新卒メンバー一人ひとりとの信頼関係を築くことに時間も工数もかけています。その一例として、大企業では外部講師に委託するような研修であっても、サイボウズでは社内の先輩社員が講師を務め、直接先輩が伝えるようにしています。
例えばマナー研修では席次や名刺交換のやり方などのビジネスマナーの基本形だけでなく、社内での事例やエンジニア界隈などでの特定の場面での望ましい振る舞いを交えながら伝えています。
このように社内で実施することで先輩社員側は社内の歴史や文化を伝えることができ、新人さんはより身近な例として納得しながらマナーを身につけられます。
また、「こんな時はこうしなさい」ではなくマナーにおける大切な心構えを伝え、あくまでTPOに合わせて柔軟な対応しましょうという伝え方をして、より納得感を得ながら身に付くと考えています。
ハイブリッド型でオフライン・オンラインそれぞれの良さを活かせた
今回はハイブリッド型で実施したことで、オフライン・オンラインそれぞれの良さを取り入れられました。
オフライン研修の良さはメンバー同士の関係性がつくれることです。新卒同士で相談しあう関係や、業後に食事に行く関係性が人事の介入なしで自然に作れたのは、1週目を対面でのオフライン研修にしていたことも大きかったと振り返って思います。
今年はこれに加え研修2週目の金曜日に社内で参加自由の全社イベント「新歓フェス」があり、そこで先輩社員が部活の説明を行うなど、リアルで集う機会がありました。全社イベントの前に同期で顔を合わせる機会があり、オフィスの使い方を少しずつ覚えられたので、一緒にイベントに参加しよう!と新人同士が声を掛け合い、結果として先輩社員とのつながりや歓迎されているムードを味わってもらえました。
オンライン研修を一部維持した良さもあります。インプットが多い講義ではアクセシビリティに配慮でき、様々な事情を持ったメンバーが研修に参加しやすい環境をつくれました。例えば聴覚障害のある方はざわざわしていると講義を聞き取りにくく、また別の方は手元のパソコンで照度を見やすく調整して話を聞くことができました。各自が集中しやすい環境から参加してもらうことで、それぞれが自分に合った方法でインプットできる良さがありました。
リモートでも、研修中にわからないことを気軽に質問できるようkintoneに「実況スレッド」を作成しました。ここでは講義の進行に関係なく自由に書き込みや質問ができます。講義の合間に先輩社員が回答することで、質問をそのままにせず、理解促進できるようサポートしました。
またハイブリッド型にしたことで出社すること/在宅勤務することに徐々に慣れてもらえました。23卒の皆さんは学生時代からオンライン授業が多く、社会人になってすぐ毎日電車で通勤するのは体力的にも慣れるのが大変です。コロナ禍を経た先輩社員も毎日は大変な方が多いのではないでしょうか。
過去の新卒集合研修のアンケートを参考に、疲れない位の出社頻度となるよう週に2〜3日出社くらいで出社するような形に調整しました。インプット重視の研修が続く日は在宅勤務でも可能で、対面でのグループワークが続く日はオフィスに来てもらうように設計しました。
総括
2020年からフルオフラインで開催された研修の流れから、コロナ禍を経てより参加しやすくアップデートされたサイボウズのハイブリッド型集合研修をご紹介しました。
実は、ハイブリッドで開催することで、工数は例年のオンライン研修の倍くらいかかったとのことでした(担当者談)。それでも研修を受けた新卒メンバーからの評価は高く、研修担当者の手応えとしても「大変だったけどやってよかった!」と新卒オンボーディングチーム満場一致で振り返ります。
皆様の会社でもきっと試行錯誤した4年間だったのではないでしょうか。サイボウズでのハイブリッド型の開催方法や、プログラムの設計意図が皆様の会社の研修でも参考になれば嬉しいです!
記事協力:新卒オンボーディングチーム小野さん・金子さん