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サイボウズ 「100人100通りの働き方」から「100人100通りのマッチング」へ

先日、サイボウズでは「100人100通りの働き方」「働き方宣言制度」という表現は使わない、というアナウンスがありました。

変更に至るまでの経緯や、新しい表現に込めた想いなどを、人事本部長の中根にインタビューしました。

人事本部長 中根 弓佳

Q.「100人100通りの働き方」というフレーズをもう使わないって本当ですか?

本当です。今後「100人100通りの働き方」「働き方宣言制度」の表現は使わず、HPや資料等で使っている場合は順次差し替えを行います。

Q. そもそも「100人100通りの働き方」が生まれた背景を教えてください。

かつてのサイボウズは、当時の一般的な企業と同様に、全てのメンバーが出社し、時間も含めて働き方の選択肢は1つでした。ですが、事業環境が変わり離職が増えたことで、採用とリテンションが最重要課題となりました。採用弱者の状態から少しでも多く仲間を集め、継続的に成長し活き活きと、定着して働ける環境にしたい。人材戦略の1つとして、多様な働き方が実現できる会社にしようと制度を増やしていきました。そうした中でわかりやすく「100人100通りの働き方」という言葉を掲げました。

結果として、「そんな働き方ができるのであれば」と、長時間勤務は難しいが短時間でなら働ける優秀な人たちを含め、たくさんの仲間を集めることに成功しました。私たちの持つグループウェアというツールの「時間や場所を超えられる」という強みもあり、多様な働き方を実現しました。

「自由な働き方」のイメージが一人歩きするように

Q. 表現を変更しようと考えたきっかけを教えてください。 

「100人100通りの働き方」という表現によって「働き方は何でも選べる」と極端に捉えられることが増えてきたためです。採用では、サイボウズの事業や理想への共感よりも前に「働き方が自由だから入りたい」という候補者が増えました。残念ながら社内でも、個人的な希望や幸福が必ず実現できることが前提のように捉えられ、マネジャーとのコミュニケーションが難航する、非効率なコミュニケーションがなされる、というケースを見聞きするようになりました。

私たちの大前提となるポリシーは「チームの生産性とメンバーの幸福の両立」です。チーム側の「やるべきこと」とメンバーの「やりたいこと」のマッチが成立したら、お互いが幸せに、サステナブルに働くことができるよね、というメッセージを正しく伝えるためには、わかりやすく「マッチング」という言葉を使うのが良いと思いました。

Q. 社外からは「1人1人のわがままを許容している会社」といった見られ方をしていますよね。

社内外プロモーションとして「わがままは正義」とか「がんばるな、ニッポン。」とか、世の中へ振り切ったメッセージを出していました。既存のあり方を問うという目的があり、それは大成功だったと思います。ただ、そこには背景となる思考があるにもかかわらず、表面的なキャッチーな言葉だけを捉えて誤解してしまった人がいたものも事実です。

100人100通りの個性は引き続き重視する

Q. 「100人100通り」は継続するのですね。

はい。「100人100通りの個性=多様な個性」を重視することは、良いチームワークを創るカルチャーの1つとして引き続き大事にしていくので、わかりやすい「100人100通り」という言葉は使います。そしてこれまで通り、チームとしての生産性も上がり、個々の幸福度も上がるポイントを探していくことにはこだわっていきたいと思います。

チームの生産性とメンバーの幸福の両立

Q. 伝えたいメッセージを変えるわけではなく、伝わりやすくするための変更ということですね。

はい、そうです!考え方はずっと変わっていないです。

チームワークの成果は「効果・効率・満足・学習」だと思っていて、大まかにいうと効果・効率がチームの生産性で、満足・学習がメンバーの幸福です。この4つが両立すると非常にマッチングが良くて、かつチームワークの成果が最も出ている状態だと思っています。

メンバーとしては、チームの生産性が上がって売上も上がり、チームワークあふれる社会になれば嬉しいですよね。「チームワークあふれる社会にしたい」と思ってサイボウズに入社しているわけで、それが達成できることが一人ひとりの理想であり共通だから。そこに一人ひとりの成長や、「このチームでよかった」という心理的なものが加わり、コミットメントや充実感みたいなのを得られることで、「もっと貢献したい」とさらに良いアウトプットが出せる、そんな世界観をイメージしています。

やっぱりチームとしての成果が出せるっていうのは必要。
成果を出したいから、チームになって集まっているのだから。

Q. チームの生産性だけで見ると、やはり週5日間フルコミットすることが良いのでしょうか。

それは良い悪いではないですね。短期的に成果を出したい場合はそうかもしれない。一方で、長期で見た時に、週5日間残業も含めてフルコミットすることが難しい人が、その状態で継続的にアウトプットを出し続けられるか、サステナブルかといったら、全員がそうとは言えない。長期目線で考えれば考えるほど、メンバーの幸福との両立を考えることでチームの生産性が上がると考えています。

チームの生産性とメンバーの幸福がトレードオフになる場合もあるし、それを認識してほしいゆえの「マッチング」という言葉ではあります。良い調整ができない場合は受け入れられません、ということもあり得ます。ですが、チームの工夫やテクノロジーを活用して、できるだけ両立できる世界観を作りたいし、サイボウズのメンバーなら創れると思っています。

「何に対して情熱を注ぎたいか」「どんな理想を持っているか」はメンバー各々がよく知っていて、その中で「チームとマッチングする部分」を自分から探していくことがすごく大事です。その方が仕事は楽しくなる。別に長時間働くことだけが正解ではないですが、没頭できるとか、楽しくてもっと仕事したい、チャレンジしたい!とか、自らがそう思えることは素晴らしいですし、そういう状況は作りたいですよね。

Q. 「働き方宣言」についても、「働き方マッチング」であるということですね。

そう。一方的に宣言して、なんでも実現できるものでもない。フルリモートではできない業務もあるし、働き方や業務内容を変えたい時に給与も変更しないと合理的でない場合もある。

何時にどこで働くかだけが条件になることは絶対なくて、業務内容や報酬が必ずセットになります。そこをしっかりと表現したくて「働き方マッチング」に変えました。

Q. 「100人100通りのマッチング」では、マネジャーがマッチングを探る難しさは残りそうですね。

それは人材マネジメントの重要な仕事ですね。石垣型の組織として、そこはマネージャーがサボらずに向き合っていきたいところだと考えています。

ジョブディスクリプションも業務量も全部決めてしまえば難しくならないけど、「それでいい人採用できますか?」「メンバーは働きがいを持てますか?」という問題がある。メンバーのパフォーマンスが一番出て、ピタッとはまる形に、バランスをとりながらうまく組み合わせていく必要がありますね。ですが、マネジャーにもチームにも仕事にも限界があります。本人が自立的にマッチングを探すことも重要です。

「マッチング」をしやすくするためには、重なりを増やせばいい

100人100通りのマッチングを作るのは容易ではありません。マネジャーだけではできません。一緒に働くチームメンバーも工夫する必要があります。例えばチームにできることは、ツールの活用とチームワークの仕方、コミュニケーションの仕方の工夫です。ノウハウや文化みたいなものを広げていくことで、チームとしての許容度は広げていけます。

一方でメンバーにできるのは、「できること」を増やし、「やるべきこと」のストライクゾーンを広げることです。スキルを磨くことはもちろん、いろいろな人とコミュニケーションできる人の方がゾーンも広がります。「個の貢献度」だけでなく、「それは会社にとって意味がありますね、じゃあ自分はチャレンジしてみます」といったようにチャレンジしてみようという意欲や「共感度」も高いと、許容度の範囲がさらに広がると思います。

このようにチームとメンバーとが一緒に探っていけば、重なりは増え、マッチングの難易度は下げられるはずです。

まとめ

サイボウズは今後も「100人100通りの個性」があることは前提としつつ、チームの生産性とメンバーの幸福の両立のために、「100人100通りのマッチング」の実現に挑戦していきます。

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