グローバルに広がるチームワークを言語面で支援!サイボウズの翻訳・通訳スペシャリスト集団の舞台裏をご紹介!
突然ですが、みなさんは翻訳者と聞くと、どのようなイメージが浮かびますか?たくさんの辞書を広げて、一心不乱に机に向かう「がり勉タイプ」を思い浮かべた方もいるかも知れませんね。
では通訳者はどうですか?海外の有名俳優の舞台挨拶や、スポーツ選手のヒーローインタビューでスポットライトを浴びて活躍する通訳者でしょうか?
実は、サイボウズ人事本部にも社内の翻訳・通訳を専門に担当する部署があります。今回の記事ではTranslation(翻訳)& Interpretation(通訳)部、通称T&Iの舞台裏をご紹介します。
T&Iのチームミッション「グローバルに広がるチームワークを言語面で支援する」
読者のみなさんはもうご存知かも知れませんが、サイボウズの企業理念は「チームワークあふれる社会を創る」。この社会は、日本社会だけを指しているわけではありません。サイボウズの製品をチームワークの要として海外でも使ってもらい、世界各地でチームワークがあふれる状態を目指したいーそのためにサイボウズはベトナム、中国、米国をはじめとする海外でも事業を展開しています。また国内外の優秀な人材を確保し、グローバルに通用する競争力を蓄えるために、日本国内でも積極的に英語話者を採用しています。つまりサイボウズには、日本語以外の言語を母国語とするメンバーが数多くいるのです。
そこで言語の架け橋として誕生したのが、T&Iチームです。「グローバルに広がるチームワークを言語面で支援する」をミッションに掲げ、日本語⇔英語、日本語⇔中国語、日本語⇔ベトナム語の翻訳者、通訳者を中心に総勢15名のメンバーが所属しています。
T&Iチームの誕生秘話
T&Iチームの前身であるグローバル・コミュニケーションチーム(以下、GCチーム)が発足したのは、2020年3月。グローバル展開を加速させるという事業目標に対して、現地の担当者が奮闘するだけでなく、可能な限り関係するノウハウやスキルを活かし、協力体制を敷いて取り組むことになりました。これまで海外事業にかかわっていなかったメンバーも、必要に応じて相互に情報共有し協働すべく、海外事業を職能型組織に変更しました。ただ国を越えてコミュニケーションを取るには、言葉の壁を越える必要があります。しかし誰もが外国語が堪能というわけではありません。そこで言葉をつないでくれるチームを創るため、GCチームが誕生しました。時を同じくして米国拠点のメンバーが日本に拠点を移すことになり、マネージャーとしてチームづくりに尽力しました。
部署名の通り、発足当初は言語以外にもグローバル・コミュニケーションに関わるインフラ作りや、言語と文化を越えたコミュニケーション促進の仕組みづくりも視野に入れたチームでした。ただ業務範囲が他のチームと重複するという問題が起こり、チームの業務範囲を見直し、言語面からグローバルなチームワークを支援する役割に徹することになりました。そこで2022年7月に部署名を変更し、現在のT&Iチームに至ります。
全世界から集まった精鋭メンバー達
GCチーム発足時は、マネージャーと日英翻訳者の2名でしたが、今では15名のメンバーが所属しています。それだけ採用活動に力を入れてきました。
サイボウズ社内に専任の翻訳者・通訳者が一人もいないところから、現在のチームに育て上げた立役者が前述のマネージャー、T&I部長のMegumi Weiderです。「チームワークと品質の高い翻訳・通訳を提供したい」という思いを胸に、日英、日中、日越の翻訳者・通訳者を採用してきました。そのなかでも特に苦戦したのが、日英の翻訳者・通訳者の採用。英語が母語で日本語能力も一流、そして翻訳だけでなく通訳もできる、そのような逸材を探して日本国内だけでなく、サイボウズの拠点がある米国とオーストラリアでも採用活動を展開しました。その結果、オーストラリアで経験豊富な翻・通訳者が見つかり、主力メンバーとして大活躍してくれています。
このような採用活動を通してチームに加わったメンバーの国籍は、中国、ベトナム、オーストラリア、ハンガリー、ノルウェー、日本とさまざまです。またほとんどのメンバーが基本的にリモートワークをしており、住んでいる場所も関東圏だけでなく、東海、九州、海外と人それぞれです。これだけ多様性に富んだチームであり、かつ普段は離れて仕事をしているので、半期に1度ほどチームメンバーが東京に集まり、対面でチーム・ビルディングを実施しています。また中国の西安出身のメンバーが、東京オフィスのキッチンで本場の水餃子をふるまってくれたり、東京に出張に来たメンバーと食事をしに行ったり、機会があれば集まって親交を深めています。そのおかげもあって、言語ごとにチームは分かれていますが、互いに協力しあってチームワーク良く働いています。
T&Iチームの活動内容とは?
ここからはT&Iチームで担当している業務をご紹介します。個人情報を取り扱う機会があり、また海外拠点や国内の非日本語話者の情報を取得しやすいという理由から、T&Iチームは人事本部に属しています。しかし人事関連の翻訳・通訳だけを担当しているわけではありません。全社から依頼を受け付けており、依頼内容は開発からマーケティング、営業まで多岐にわたります。
サイボウズでは一部の非公開事案を除いて、経営会議の内容が、毎週全社に情報公開され、議論の内容まで広く共有されています。その議事録を英語、中国語、ベトナム語に翻訳し、タイムリーに各言語で共有するのも私たちの大切な業務です。
また最近増加傾向にあるのが、社内で公開される動画の字幕や吹替えの依頼です。先日社内で開催されたサイボウズの創業祭「26th Anniversary Film Gala - 創業記念動画週間 -」で上映された動画が良い例です。ベトナム語で作成された動画を、まず日本語に訳し、それを英語と中国語に訳す「リレー翻訳」に初挑戦しました。海外拠点のメンバーも含めて、全社員が同じ動画を好きな言語で視聴して、チーム・サイボウズの一員だと実感できる。まさにT&Iチームのミッションである「グローバルに広がるチームワークを言語面で支援」を実現できた案件でした。
そのほか、通訳の依頼も全社から受け付けています。「ザツダン」と呼ばれるメンバーとマネージャーとの1 on 1から定例会議、採用面接、株主総会まで、声がかかれば通訳者として同席します。
通訳の場合は、会議の形式や参加人数によって最適な通訳方法が変わります。1 on 1のように会議の参加人数が少なければ逐次通訳(※1)、セミナー形式で出席者が多ければ同時通訳(※2)、というように、案件に適している通訳形式をおすすめすることがあります。まだ通訳者と一緒に仕事をしたことのないメンバーもいますので、事前に打ち合わせを設定して注意点を共有し、スムーズな進行を心がけています。
※1:話者の発言の区切りごとに通訳者が訳していく通訳手法です。
※2:話者が話すのと同時に通訳者が訳していく通訳手法です。
通訳形式が決まったら、あとは事前資料に目を通して本番に備えます。入社当初は逐次通訳の経験しかなかったメンバーもめきめきと実力をつけ、積極的に同時通訳にもチャレンジしています。
日本語⇔英語の翻訳・通訳チームは依頼案件数が多く、案件の種類も多岐にわたるため、専属のコーディネーターがついています。依頼の詳細や締め切りなどを丁寧にヒアリングし、メンバーのスケジュールや工数、得意分野などを考慮して、案件を割り振ってくれる心強い存在です。
案件数が多いので管理も大変ですが、そこで活躍しているのが自社製品kintoneのアプリです。翻訳・通訳の依頼受付から案件の割り振り、進捗管理、依頼主とのコミュニケーションまで、すべてアプリ上で行います。翻訳の締め切りが近づくと、自動でリマインダーが飛んでくるので、うっかり翻訳の提出日を忘れてしまうこともありません。
また正確な翻訳や通訳には、企業理念や風土、製品名や役職名、制度名など重要な単語(訳語)の統一が欠かせません。そのための用語集(訳語集)にもkintoneアプリを使っています。
このように一言で翻訳・通訳と言っても、意外と業務の幅が広く、チームで上手く役割分担をしながら仕事を進めています。
今後の展望
発足から3年半が経ち、社内でも多言語化の相談先として少しずつ定着しているT&Iチーム。今は社内のメンバー向けに翻訳や通訳を提供することがほとんどですが、今後はサイボウズの海外事業展開をさらに加速するために、社外にも目を向けていきたいと考えています。そのひとつが、多くのユーザー様、パートナー企業様が足を運んで下さる、サイボウズ最大のイベント「Cybozu Days」での言語支援です。そういった場所で通訳を提供できれば、海外からの来場者様にも、サイボウズの目指す世界観を体感していただけます。また展示ブースに通訳者が常駐していれば、言葉の壁を越えて、新しいビジネスチャンスが生まれるお手伝いができるかも知れません。
最後に
生成AIや機械翻訳の精度が上がり、日本語をコピー&ペーストすればボタン一つで簡単に翻訳文が表示される時代ですが、社内翻訳者・通訳者ならではの強みもあります。それは機械のように単純に言葉と言葉を置き換えるだけではなく、発言者や書き手の真意、背景にも配慮した的確な訳出ができること。そのためにも、一つ一つの翻訳案件、通訳案件に真摯に向き合い、自社製品やサービスに関する知識を増やしつつ、言語スキルを磨き、社内での信頼を獲得できるように心がけています。
映画スターの通訳者のようにスポットライトを浴びることはなくても、サイボウズの一員として、言語の壁を越えたチームワークを着実に支援していく。その先の地平線に「チームワークあふれる世界」が見えてくることを願いつつ、T&Iのメンバーは今日もどこかで辞書を引きながら机に向かっています。