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進化する企業理念、変化を恐れないサイボウズのCultureアップデート

サイボウズでは「企業理念は石碑に刻まず、常に変え続けられるようにすべきである」という考えのもと、企業理念を常にアップデートし続けています。

サイボウズの企業理念は存在意義(Purpose)と、存在意義の基盤となる5つの文化(Culture)で構成されており、2024年3月の株主総会で文化(Culture)の一部変更が決定しました。
具体的には、Cultureの一つである「自立と議論」を「自主自律」と「対話と議論」に変更し、今まで4つだったCultureが5つになりました。

サイボウズの企業理念(Purpose&Culture)

変更に至るまでの経緯や、新しい企業理念に込めた想いなどを、社長の青野さん、 Cultureアップデート事務局として企業理念の変更を進めた綱嶋さん、橋本さんにお話を伺いました。

左から綱嶋航平さん、青野慶久さん、橋本岳さんの写真
インタビューにご協力いただいた3名

まずは企業理念についての考えを青野さんに聞いてみました。

Q. 企業理念を株主総会の議案に挙げるのは珍しいと思うのですが、いつから株主総会で決めていますか?

企業理念は株主総会で決めることだ!と定款を変えて、その定款に沿って株主総会で初めて企業理念を議案に挙げたのが3年前です。

Q. 株主総会で企業理念を決めるようにしてよかったですか?

よかったと思います!同じ目的から話せるので経営がしやすいです。
これまでは、合意を形成するにあたって共通の理想がなかったという状態だったと気づきました。
共通の理想があると、株主と話すときに同じ目的から話せますよね。例えば、もっと配当を出してほしい!と言われたときに、いっぱい配当を出すのと出さないのと、どっちが「チームワークあふれる社会」を目指すにあたって、どっちが効果的?効率的?ということを話せるのです。

Q. 青野さんが「企業理念は石碑に刻まない」と考えているのはなぜですか?

そもそも企業理念は石碑に刻めないものだと思います。
こうありたい、こういう社会にしたいという理想を石に刻んでも、人が思っていることは変えられないし、バーチャルな法人ではなく生身の人間が考えることである以上変化するので、企業理念も常に変化する必要があると考えています。人間が思うことである以上、石碑に書いて固定することはできないですよね。
みんなが目指そうって言うから、掲げる意味があるのであって、掲げているけどみんなが共感していなくて目指していないのであれば企業理念がある意味がないと思っています。

次に企業理念を変えよう!と思った背景についてざっくばらんに聞いてみました。

Q. 企業理念の一つである「自立と議論」を変更しようと考えた背景を教えてください。

綱嶋:
変更した理由の1つは、「自立」という言葉が誤解を生みやすい言葉になっていたことですよね。本来、これは人を頼ったほうが良いな、とかこの意思決定はこの人に任せようということも、「自分で主体的に選択して、その結果は自分で責任を引き受けようね」というスタンスの話だったんですけど、「自立」ということは自分一人で全部やることだ、みたいな誤った解釈もできてしまって、誰かに相談しづらいとか、自分一人で頑張んなきゃいけないんだというように誤解されることもありました。

橋本:
あと、「自立」と「議論」という意味合いの異なるものが、同じ一つのCultureで良いのかという点もポイントでしたよね。

青野:
2人の言ってくれた違和感もあったし、せっかく株主総会で企業理念を変えられるようにしたのだから試したかったという思いもありました。社内で議論して、株主総会でさらに株主の意見ももらって決めていくっていうプロセスを一回やってみることが大事!と思っていたので。

綱嶋:
そうでしたね。企業理念を変えよう!とプロジェクトが始まった当初の議事録にも、「一回、アップデートプロセスを回したい。」とちゃんと記載がありました(笑)

以前は青野さんがほぼ一人で作ったという企業理念。
今回社内でワークショップを開催したり、みんなで企業理念を考えたりしよう!と考えたのはなぜでしょうか?

青野:
決めたものを落としていくというプロセスもあるとは思うし、実際に変更案もありました。でもやっぱりこっちで決めて落としていくやり方がそもそも公明正大感がないし、自主的な議論を巻き起こしたいという思いがありましたね。
その辺りは、事務局の二人が上手いことやってくれたよね。

綱嶋:
社内には本当に多様なメンバーがいて、この企業理念を変えるということに関しての共感度・距離感も人それぞれあるということは意識していました。
まず最初に、関心が強い人たちに熱く共感してもらってそこで議論をして深めて、そこで出てきたアイデアをもとに事務局側で集約して叩きを作ったら、今度は多くの人にざっくり共感してもらえるよう幅広く話していくという二段構えでやっていきたいねと話していました。
最初は火種がないと炎を起こせないので、熱い議論の場を設けたい!とオンラインでワークショップをやろうと社内に公募して、2023年の11月・12月に一回ずつ開催しました。

橋本:
Cultureってみんなで体現したり、共有したりするものなので、みんなの納得感が大事だと思っています。
ただ、人によって距離感は様々で、キャンプファイヤーに例えると、炎の中心にCultureの価値観があったとしたら、炎の近くで踊りたい人もいるし、少し離れたところでスープを飲む人もいるという。
まずは、炎のすぐ近くにいたいという熱量を持った人を集めたイベントで文言をしっかり揉んで、揉んだ文言を少し距離感があってもいい人たちにも広げて理解してもらって、全員で浸透して共有の価値観を持つというのが大事なんじゃないかという思いでイベントを進めていきました。

青野:
ワークショップって、参加者が集まるのかなとかも思いましたけど、うまく声をかけていたよね。

橋本:
過去の全社イベントなどで、Cultureに強い関心がある人は一定数いるなとわかっていたので、もともと少しは集まるだろうなという予想はしていました。あとは、この人が来たら盛り上がるかな?とか戦略的にやりましたね。

綱嶋:
例えば、人事の人しかいないとか、一部の年代の人しかいないとなると、メンバーの声をちゃんと反映できていることにはならないと思っていたので、意図的に色々なメンバーに声をかけたり...社内広報は大事ですね。

Q. 言葉の変更だけではなく、これまで4つだったCultureが5つに増えましたが増やすことに抵抗はなかったですか?

青野:
ありました。増やすことは簡単なのでみんなの好きな言葉集めましょうとしたら、我が社の企業理念は100個の言葉からなりますってことになっちゃう。同じ方向を向いていないと企業理念として意味がない。
それに、たくさん項目としてありすぎると覚えきれないし、浸透しないという話を聞いたこともあったので増やすことには一定の抵抗感がありましたね。

でも、社内の声で「『対話』『議論』が大事だと思っているので、残してほしい」という意見が一定数あったのを見て、増やすという選択肢もあるなと思いました。

Q. 「対話と議論」という言葉に決定するまでにも、二転三転あったかと思いますがどういうプロセスで決定しましたか?

橋本:
「議論や対話の要素をCultureの文言に含めてほしい」という助言を受けて、5つ目を追加することを決めました。そこで、「共創的な対話」「建設的な議論」のどちらかということで決選投票を行ったのですが、蓋を開けてみたら共創的な対話50%、建設的な議論35%、別案があればということで念のため設けていた「その他」が10%もありまして...。

青野:
決選投票として、基本2択と思っていたのに「その他」を選ぶ人が結構いたっていうね。

綱嶋:
「その他」を選んだ中にも「対話と議論」と答えてくれた人が11名いました。

橋本:
フリー記述なのに「対話と議論」というその意見の人が11名もいるなら、「対話と議論」めっちゃいいのでは?とアンケートが終わった後、3人とも同じ意見でしたね。

青野:
言葉が二つになってわかりにくくなるわけでもなく、どちらも大事な「対話と議論」という良い折衷案が出て、この案でいこうとなりました。


Q. 企業理念を変えるという1連のプロセスを回してみてどうでしたか?

青野:
もうちょっと時間に余裕が欲しかったです(笑)。株主総会で決めるってなっていたので期限が決まっていたからきつかったよね。

綱嶋:
企業理念を変えようなったのが2023年9月だったので、初めてのことを約半年でやらなきゃということでバタバタしていました。
あと、なんかこんなスピード感で進めちゃっていいのかなってちょっと不安になった機会もあったのですが、もし違ったら来年また変えればいいからと青野さんに言ってもらって気が楽になりました。

青野:
変えない期間が長くなれば長くなるほど変えにくくなるのだったら、ちょこちょこ変え続けたらいいんじゃないかなと。小さい変更を躊躇わないことが大事だなと思います。

Q. 来年また変わる!みたいな可能性もありますかね?

橋本:
変わってる可能性の方が高くないですか?気のせいですかね?

一同:
ありそうありそう(笑)

最後にこの記事を読んでくださっている皆さんからメッセージをお願いします。

綱嶋:
今回のCultureアップデートは、青野さんも密に関わっていただいたけど、実担当者の2人で動かす感じでした。なので経営者の企業理念に対する思いを理解しておくことや、そこに対して納得しておいてもらうみたいなところは大事だったなと思います。
ミッションを作ろう!パーパス経営だ!と経営の世界で割と溢れているかもしれませんが、流行りに乗るっていうことではなくて、それをやるのがなぜ大事なのかという目的を握っておくっていうのがめちゃくちゃ大事だと思います。

橋本:
企業理念を語るのは、企業のトップである社長だけど、実際にその価値観を体現し、日々の仕事に落としていくのは現場の社員なので、トップの青野さんと現場の一人一人の意見を、抱き合わせて考えて進めていくというのが大事かなと思います。
綱嶋さんと同じく、青野さんのダメなら変えても良いという考え方がすごく大事で、企業理念を変えるってものすごく大きいことだから、なんか失敗しちゃいけないんだって思うと思います。でも、別にダメだったら変えればいいかなっていう考え方のもとで進められたので、えいや!で決めちゃえる部分もあって今回の変更がスムーズに進められたと思います。

青野:
お二人が話してくれたものに付け足すとするならば、こういう企業理念はトップの人の考えを聞いて言葉にするというふうに捉えがちですけど、実際には私の中でこれみたいなのが定まっているわけでもないですし。
例えば、今回のことも「自主自律」という言葉も2人から出てきたもので、私はその言葉に共感しました。まさに対話の中から作り出されたものだなと思うので、トップの人の中に答えがあると思わない方がいいと思います。ふわっと湧いてくる言葉が答えなので。言葉も生きていて、時代に合わせて変わっていく。トップだって人間で考えも変わっていく。その中でみんなで共感できるものが生まれていく、それこそが企業理念だと思いますね。

インタビュー終わりに変化の季節"春"の象徴である桜の装飾が施された企業ロゴの前で📸

最後に…
変わり続けるサイボウズの企業理念について、変更に至るまでの経緯や新しい企業理念に込めた想いなどをざっくばらんにお話しいただきました。
企業理念を変えたいけどなかなか変えられないという方、企業理念の浸透に苦労している方々の参考になれば幸いです。

反町琴美(記事を書いた人)

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